苔は大気汚染を把握することができる

CATEGORY: 苔について

苔はじめじめした土の上に生えている、という印象があると思いますが
実際苔はありとあらゆる様々な場所に生息し、力強く生きています。

土の上はもちろん、他の植物の上、石の上、人がつくったブロック塀や
コンクリートの壁など様々ですが、ひとつの種類があらゆるところに
生育しているわけてはなく、それぞれが住みやすい環境があります。

木の幹は中でも最も住みやすい環境のひとつで
樹幹に着生するタイプの苔は乾燥に高い耐性を持ているものが多いですが
光合成をするには「水」は必要になり、木の幹は一見乾燥しているよに見えますが
雨が降ると十分に湿り、石やコンクリートより乾燥するのに時間がかかります。

木の幹では、土の上のように他の植物と光を巡って競争する必要もなく
水が得られる間あは十分に光が使えて光合成を行うことができます。

このように木の幹に着生している苔を「樹幹着生蘚苔類」と呼びます。
樹幹着生する植物はコケ類の他に、ランの仲間やシダ類、地衣類にもみられ
降水量の置い地域や濃霧がよく発生する環境では木の幹がみえなくなほど豊富に着生します。

大気汚染物質に敏感な苔

この樹幹着生蘚苔類にとって大きな障害は大気汚染物質の存在です。
苔にとって大気や雨水が純粋な状態であれば、樹幹着生は非常に心地良い場所になります。

しかし、大気や雨水中に汚染物質が混ざりこみ
育成に欠かせない酸素や二酸化炭素が汚染されているとなると
枯れてしまう可能性が高まります。

大気が劣悪化した場合、樹幹着生植物が衰退していく様子が
初めて観察されたのは19世紀のことで、産業革命以降の石炭消費に伴う大気汚染が原因で
豊富にあった樹幹着生地衣類がいたるところで消失してしまいました。

同様に樹幹着生蘚苔類も大気汚染に影響を受けやすいことも観察されました。

日本では気候要因が湿潤なので樹幹着生蘚苔類が多く分布しますが
やはり大気汚染濃度に強く影響されていることが分かっています。

この事実が発見されてから20世紀半ばまで、大気汚染物質の主要成分は竜王酸化物で
水に溶け込むと非常に強い酸化力を持ちますが、石炭から石油や天然ガスへ
エネルギーが転換したため現在は減少しています。

そのかわり、自動車使用の増加に伴って窒素酸化物や、
それが光化学反応を起こすことで光化学オキシダントが生成され大気二次汚染物質が増加し、
これらは樹幹着生植物に強い毒性を示すといわれています。

大気汚染による具体的な苔への影響

コケ類が大気汚染物質に感受性が高い理由として、
コケ類のほとんどが光合成細胞が直接的かつ永続的に大気環境にさらされているため
細胞単位で大気の出し入れを行っていることが大気の変化に敏感ということです。

また、多くの種で葉の細胞層が一層で光合成細胞が汚染物質にさらされ続けることも要因です。

栄養が十分に得られない環境では、大気中から酸素や二酸化炭素だけでなく
栄養分まで求めることになり、これも要因のひとつになります。

さらに、蘚苔類は大気汚染物質の中でもとくに金属汚染物質を蓄積してしまう性質があり
細胞のミネラルバランスや代謝を乱す可能性があるといわれています。

乾燥など自然のストレスには強い蘚苔類も、
人間が創りだした大気汚染という毒には弱いということがわかります。

苔を調べることで大気汚染を測定する

この大気汚染に対する反応は種によって異なります。
大気汚染に対して弱いものもあれば、ある程度耐性を持つものもあり
大気汚染に弱い種類が衰え減少することで競争が低下し分布範囲を拡大する種類もあります。

なので、苔が樹冠を広く覆っていても種数が少ないと
大気汚染の影響があると判断することができます。

この性質を利用し苔の種類組成と生息量を測定することで
大気汚染濃度を指標する大気汚染清浄度指数が考案されました。

この指標は世界の様々な都市で適応され、
汚染物質の濃度と非常に高い相関があることが確認されています。

ある程度の苔の種類を選択し、その生育分布を観察することで
その地域の汚染度を理解することができます。

大気の汚染、つまり人間活動の活発化を指標してくれる
樹幹着生蘚苔類は人類が地球環境を変化させている愚かさを指標してくれているのではないでしょうか。

これからは、身近な森を増やし守り保全するとともに
これらの木々に着生する苔を増やすことも大切な視点となるでしょう。

苔は薬剤に強い

みなさんは、人工的に設計された緑化エリアにある苔を
どう感じていらっしゃいますか?

苔を使って庭を緑化したいというニーズもあれば
芝生に生えた苔を取り除きたいという要望もあります。

特にゴルフ場のグリーンに苔が沢山生えたケースなどの場合は
ある種類の薬剤が大量に散布し苔を含めた雑草を除去しているそうです。

苔を雑草から守るには

苔を取り除きたいというケースとは別に
庭にある苔を雑草から守りたいというニーズもあります。

庭の雑草を除去する手段として除草剤を使用する場合がありますが
この除草剤は種類によっては苔にほどんど効かないのです。

除草剤パラコートの一種でグラモキソンというのが
スギゴケに対して薬害がほとんどないことで広く使用されおり
使用後に単子葉類・双子葉類は枯れてしまいますが
苔はまったくどうもなく逆に青々とするぐらいとのことです。

日本庭園

ただ、除草剤の中には苔まで枯らしてしまうものもあり
これらを苔庭の除草目的で使用することは避けたほうがよいですね。

同じように、庭木の消毒も苔に悪影響を与えることも報告されています。
この場合は、苔に薬剤がかからないようシートをひくことで防ぐことができます。

ところが、ハイゴケやイタチゴケやアオギヌゴケの仲間
つまり苔のなかでも雑草的正確の強い種類は消毒に強いようです。

ゼニゴケ対策

盆栽や苔庭で嫌われるゼニゴケ類は
除草剤ではなかなか枯れず問題となってしまいます。

ゼニゴケ

ゼニゴケ退治にコケレスという商品がありますが
有効成分は酢酸でできている対策アイテムです。

酢酸の主成分は料理に使用する酢ということで
ある本にはゼニゴケを退治するために筆で酢を塗る方法が書かれているそうです。

身近にある酢を活用してみてもいいかもしれませんね。

苔を研究し初めて見つかった物質は300種類

CATEGORY: 苔について

人類は昔から、いろいろな植物などを薬として使い
病気の症状を抑え、治療するために活用してきました。

現在では、植物などから有効成分を取り出し
さまざまな化学反応を加えて優れた効果のある物質に変化したものや
天然の物質と同じ構造の物質を科学的に合成したものが薬として使用されています。

新薬の開発には、コンピューターによる分子設計の技術が使われていますが
まだまだ天然の物質である植物が生産する物質には未知の有効成分があると考えられています。

薬草園などで栽培されている植物は被子植物がほとんどで
苔を薬に使う伝統は日本にはないですが、中国やヨーロッパでは
20種類ほどの苔が鎮痛剤利尿剤などの薬用に使用されています。

以前、HappyMOSSブログでも紹介しました苔の薬に関する記事はこちら。
苔の成分にはがん細胞を抑制する効果がある!?

苔類の細胞の中には、油体とよばれる物質が存在し
文字どうり油のように水に溶けにくい物質が含まれており
この物質はテルペン類(天然ゴムもテルペン類)とされています。

苔の研究が進むにつれ、テルペン類以外にも複雑な物質が発見されており
苔類を研究することで初めて見つかった物質は約300種あるそうです。

しかし、苔は体が小さくなんとなく地味、名前を把握するのも困難なため
研究しようとする科学者が世界でも少なく、分析がされた苔類は全体の5%程度にすぎません。

このため、苔類にはまだまだ未発見の物質が多くあると考えられ
少数の科学者で人や動物の培養細胞、昆虫や他の植物、細菌、
エイズウィルスの酵素に与える影響も研究されており
毎年のように新しい性質をもった物質が発見されています。

コケ植物のオスとメス

CATEGORY: 苔について

コケ植物にも私達と同じようにオスとメスの区別がある種類が存在します。
オスの苔を雄株、メスの苔を雌株といい、雄株と雌株では体の大きさに違いがあるのでしょうか。

私達の周りにあるゼニゴケとコスギゴケを見てみると、雄株と雌株の体の大きさに違いはありません。
このように、ほとんどの苔では雄株と雌株の体の大きさに違いはない場合が多いのです。

ところが、ある苔の種類は雄株の大きさが全長一ミリメートルにも満たず
雌株の茎、葉の基部、葉の上、仮根などに着いて生きているものもあります。

このように小さい雄株を「矮雄」と呼びます。

雌株に付着して生きているからといって雌株に寄生しているわけではなく
自分が生きていくのに必要な栄養は小さい葉で光合成を行いまかなっています。

矮雄の体のつくりは簡単にできていて、多くは短い茎の先にある二~三個の造精器が
数枚の小さな葉に包まれているだけのつくりで、小型で簡単なつくりをしていても
雄株としての役割はしっかり果たしており、精子をつくり子孫を残しています。

このような、矮雄のをつくる苔は少なくなく、日本では約60種あることが知らています。

胞子によって矮雄ができる仕組みは異なる

なぜこれらの苔では雄株がこんなに小さくなるのでしょうか。
その仕組は大きく二つあると考えられています。

一つ目は、異形胞子をもつ種類での矮雄です。
コケ植物での異形胞子とは、一つの蒴の中に大きさの異なる
大小の胞子がほぼ同数作られる場合を言い、小さい胞子からは必ず矮雄が誕生します。

二つ目は、一つの蒴の中にほとんど同じ大きさの胞子ができる同型胞子を持つ種類で
矮雄形成のしくみが異形胞子の場合と異なり、矮雄の他に雌株と同じ大きさをした
正常型の雄株が存在しています。

同形胞子では、蒴から散布した胞子が雌株の上で発芽したときのみ
矮雄となり、その他は雌株と同じ大きさになると考えられます。

生命はメスから始まった

生命体は初めメスが分裂しいわゆるクローンをつくることで種を残してきましたが
環境変化が起こると分裂により同じ性質をもつ生命が全滅してしまいます。

そのため生命体はオスを創り、異なる環境に対応し生きてきた
メスとオスを掛けあわせて、より地球上の環境変化に適応できる
子孫を残す仕組みを創り生き残ってきました。

つまり、最初はメスから始まったのです。

この矮雄の性質をみると雌株のために雄株が存在している気がしますね。

地球上の様々な場所に分布するコケ植物

CATEGORY: 苔について

植物は時間をかけてゆっくりと生息する範囲を広げ
その結果としてある程度地理的にまとまった分布領域を持つようになります。

着実に時間をかけ範囲を広げるため、分布はその種の歴史を表します。
 
 
二つの分布長距離分布・依存的隔離分布
 
 
基本的には上記のような分布が通常ですが
中には地理的にとても離れた場所に点々と分布していて
その中間地域にまったく生息が確認されない場合もあります。

このような分布のことを「隔離分布」といい
隔離分布には「長距離分布」「依存的隔離分布」の大きく二つがあります。
 
 
長距離分布は、長い距離を種子や胞子が飛び、遠く離れた場所が新しい生育地となる場合で
依存的隔離分布は、本来広範囲に分布していたものが何百年・何千年の周期で繰り返される
寒冷化や温暖化などが原因で分布領域が分散され各地に点々としてしまった場合です。
 
苔類イイシバヤバネゴケはアジアと中米から見つかっており
蘚類シワナシチビイタチゴケ属は東アジア・南米・アフリカ東部、
蘚類エビゴケ属も東アジア、北米、メキシコ、大西洋のマデイラ島、
インド洋のモーリシャス島とわけのわからない分布をしています。

これらは一例ですが、コケ植物は隔離分布や広域分布する種や属が多く見られます。
 
 

 
 
コケ植物の分布要因
 
 
この分布には主に二つの原因が考えられます。

一つ目の原因は、コケ植物が他の植物くらべ
体が小さくて見つけにくく、見落としがある可能性が高いことです。

このため、ある地域に分布していないのではなく
そこで生息しているが見つかっていないだけというのです。

キサゴゴケ属ちう木の幹に生息するとても微小なコケがあり
これまで日本で一種、北米から一種の計二種だけが知られていましたが
2002年貼るに東京大学を中心に実施されたミャンマー北部
ビクトリア山周辺の植物調査にて新しく新種が発見されました。

植物体がとても小さいことで発見が遅れたケースで
今後調査が進めば他の場所でも発見される可能性が高いです。
 
 
二つ目の要因は、コケ植物は胞子で繁殖するため風に乗って
遠方へ飛ばされやすく、地理的に遠く離れた場所に届く
「長距離散布」が簡単に起こりやすいのです。

通常の風ではそれほど胞子が高く舞うことはありませんが
台風などの強い風で上昇気流に乗ってかなり遠くまで飛ぶこともあります。

また、鳥の水かきの泥に無性芽や植物の一部の断片が付着し
遠くまで飛ばされることも考えられ、
コケ植物が長距離散布する可能性がいくつもあります。
 
 

  
空気中に漂う胞子を調べた研究では、1000キロメートル以上
離れた場所にしか見つかっていない種の胞子が発見された報告もあります。

長距離を飛散するために成層圏に達したコケ胞子が
その環境でどのぐらい生きることができるか
実際に低温低圧条件でさらした実験では
調べた多くの胞子がこの環境で生き残った報告があります。
 
 
まとめ

・苔の分布には「長距離分布」「依存的隔離分布」がある
・分布の原因は「見つけれていない」と「風でとばされる」がある
・苔の胞子は低温低圧な成層圏でも生き残ることができる

苔の分枝で年齢を判断する

ウマスギゴケやオオスギゴケは苔庭によく使用される蘚類で
ふんわりとした群生をつくります。

一本を抜いて見ると、先端から数センチは緑色の部分で
その下に長い茶色の茎が隠れていることがわかります。

この茎を観察してみると、ついている葉の密度と大きさが
場所により異なっていることがわかります。

小さい葉が詰まっている短い部分と
大きな葉が少し離れてついている長い部分が
交互に生えています。

これは季節によって成長度合いが異なるためで
春から夏にかけての成長に適した時期は活発に茎が成長するが
冬季は成長が鈍るからです。

木の年輪のように、一本の地上茎の年齢をある程度把握することも可能です。
 
 

 
 
 
イワダレゴケは土や岩の上を這う大型の蘚類で
少し標高の高い針葉樹林の林床などで多く生息しています。

イワダレゴケは茎の途中から新たに次の茎が生じるが特徴です。
次の年の茎が前の年の茎の途中から出ることを仮軸分枝と呼びます。

1年に1回分枝が起こるので、分枝の数を数えることで
ウマスギゴケの場合よりも地上茎の年齢を把握することができます。

コウヤノマンネングサやフジノマンネングサなどの大型で
地上茎が立ち上がる蘚類では新しい茎が地面下の根本部分から出て
地面下を長く伸び地下茎状になり、春に先端が地上に立ち上がって
新しい地上茎となります。
 
 

 
 
イワダレゴケやコウヤノマンネングサは
地上茎が約三年ほど緑色で光合成を行い

それ以上経つと茶色に変色して終わりをむかえます。

土を掘り見てみると、6~7年分の地上茎が繋がっていることがわかります。
 
 
まとめ

・茎を観察することである程度苔の年齢がわかる
・スギゴケは季節の成長度合いの差で年齢が把握できる
・年に1回、仮軸分枝が起こるので年齢が把握しやすい

環境に適応するための苔の戦略

CATEGORY: 苔について

植物の生体を説明するうえで、「戦略」という言葉で表現されることがあります。
この場合の戦略とは、それぞれの種が特定の環境下で最大限効率的に生活し
繁殖するということになります。
 
 
コケ植物も含め植物は他の種がやって来る前に
できるだけ素早くその場所を占領し居座り続けること
そして自分の子孫でいっぱいにすることが大切になってきます。

苔は生きる環境に適応するため、環境ごとに様々な戦略がみられます。
 
 
一年生の苔は不安定
 
 
一般的に苔は一年中緑と思われていますが
冬枯する「一年生」の種が存在します。

一年生の苔は珍しいものではなく
日本に生息しているだけでもかなりの種類があります。

西日本の田んぼに生えている葉状体性の苔類ウキゴケ属の一種で
カンハタケゴケは晩夏頃に胞子が発芽して翌年の春先に一生を終える
数ヶ月間しか生きることのない短命の種類もあります。

外国の種類でリクシア・ニグロスクアマータという種は
胞子の発芽から二~三週間で最初の生殖器官をつくり
六~八週間で成熟した胞子をつくって枯れる短命のものがあります。
 
 

 
 
一年生のコケ植物は成長の時間が限られるため
そのほとんどは小型の種類に限られます。

そのため、あちらこちらで生息しているのですが
簡単にに見過ごしてしまい、なかなか私達の目にふれることはありません。

彼らを見つけるためには、刈り入れの終わった田んぼや
水を落とした溜池、干上がった地面やひび割れた土の隙間
などが絶好の観察場所です。

これらの場所は、光をめぐって競争する相手が少ないため
背の低い苔でも十分に光合成を行うことができるからです。
 
 
一年生のコケ植物は、短い一生のあいだに一回だけ
一生の最後の段階になって胞子嚢をつくり
胞子を飛ばした後は枯れてしまいます。

休眠によって成長に不適切な時期をやり過ごすことができるため
胞子は一般の植物体に比べ乾燥などの厳しい条件に長く耐えることができます。

これらにより、一年生のコケ植物は生存に不適な状況が
定期的に訪れる不安定な環境に生えるのに都合がよいことになります。
 
 
多年生の苔は安定的
 
 
一方、森林の林床など安定した環境には何年も生き続け
毎年のように胞子嚢をつくる種類が多く見られます。

蘚類のイワダレゴケは同じ個体が80年以上生き続け
なかには石灰岩性の蘚類オウムゴケが2800年
という年齢が推定された報告があります。


 
 
いずれにせよ、「一年生」でも「多年生」でも植物にとって大切なことは
他の種がやって来る前にできるだけ素早くその場所を占領し
居座り続けること、そして自分の子孫でいっぱいにすることです。

生きる環境が「不安定」なのか「ずっと安定」に対する適応の違いが
命の長さの差ということがわかります。
 
 
このように、コケ植物の生活様式の工夫つまり戦略は
どうすれば最も効率的に光合成し栄養分を蓄積できるか
どのタイミングで生殖器官をつければ最も確実に受精ができるか
効率的に胞子を飛ばすためにはいつ胞子嚢をつくればよいか
など様々な戦略があります。

 
 
まとめ

・苔は生きる環境に適応するため、環境ごとに様々な戦略がある
・苔は一年生と多年生がある
・環境が不安定か安定なのかによって命の長さが異なる

苔のオスとメス

CATEGORY: 苔について

コケ植物における雄雌性、つまり男と女はとても複雑になっており
大別すると「雄雌異株」と「雄雌同株」にわけることができます。

「雄雌異株」は精子をつくる造精器がある雄植物と
卵がつくられる造卵器がある雌植物と個体となり動物の場合と似ています。

「雄雌同株」は造精器と造卵器が同じ個体上につくられます。
苔の場合は地下茎や仮根系で地下部がつながっていることもあり個体の識別が難しいことや
成長段階や生育環境によって雄雌同株なのに雄・雌どちらかの性しか示さない場合もあり
判断することが難しい場合があります。

 
 
雄雌同株の分類

雄雌同株は生殖器官の場所によっていくつかのタイプに分けられます。

コケ植物の場合は造卵器が普通葉と酷似し
生殖器官は必ず葉が変形した包葉によって保護されています。

雄雌同包同株

造卵器と造精器がともに同じ包葉内に混生する場合を雄雌同包同株といいます。
蘚類にその例が多くあり、苔類ではしられていません。

雄雌異包同株

造卵器と造精器がともに異なる包葉内にある場合を雄雌異包同株といいます。
蘚類・苔類どりらにも良くみられます。

雄雌列立同株

茎の先端に造卵器をつけた包葉があり
その直下に造精器をつけた包葉がある場合を雄雌列立同株といいます。

苔類では普通にみられますが、蘚類ではごく少数の例外を除き見つかっていません。


 
 
なぜ自家受精するの?

雄雌異株の場合は必ず異なる個体間でおこることになりますが
同株の場合は自家受精することができます。

これは相手がいなくても胞子体をつくることができる利点があり
高等植物では自家受精をする種がたくさん知られています。

ところがコケ植物では特別な問題が発生するのです。
コケ植物は半数体植物であり、通常の体細胞分裂によって
卵と精子が作られるため遺伝的には同質なのです。

コケ植物が自家受精すると遺伝的に同質の卵と精子が受精することになります。
これは、遺伝的に異なる卵と精子が出会い親とは異なる性質の子孫をつくり
様々な環境条件への適応や病気への抵抗性を維持するという
有性生殖の本来果たすべき役割が達成できません。

これでは、無性芽をつくり増えているのとなんら変わりがありません。

この自家受精が自然界の中でどのぐら起こっているか
ほとんど研究データはなくよくわかっていません。
 
 
胞子のオスとメス

胞子が発芽すると原糸体をつくり、そこから植物対が形成されます。
雄雌異株では胞子の段階で雄と雌が分化しており一つの胞子嚢の中に混同しています。

胞子は性の違いにより大きさがことなっており
大きい胞子が雌植物に、小さい胞子は雄植物になります。

これは異型胞子性と呼ばれ、蘚類だけで見ることができ
苔類ではまだ見つかっていないようです。

大きな雌胞子は通常の植物体へと成長するのですが
小さな雄胞子はとても小さく雄植物の1/100にしかならない雄が育ち
このような極めて小型の雄のことを矮雄といいます。

矮雄は数枚の葉をつけるだけでほとんどが造精器が占めおり生殖だけに特化しており
胞子を飛ばした母親である雌植物の上に落ちたときだけ役割を果たします。

矮雄は雄雌で胞子の大きさが異ならない同型胞子をつける種も見られます。
雄胞子は地面に落ちたとき通常どうり成長し雌植物とどうよう育ちますが
雌植物の上に落ちた時だけ矮雄になります。

これは雌が出す植物ホルモンによって矮雄へと強制的に変化されられているようです。

なぜこのような仕組みができたのかは不思議ですが
一説には熱帯に期限したコケ植物が北へと分布を広げる際に発達した機能とも言われているます。


 
 
まとめ

・コケ植物は「雄雌異株」と「雄雌同株」がある
・「雄雌同株」いくつかに分類できる
・同株の場合は自家受精することができる
・胞子には雄と雌がある

苔は地球温暖化の抑制に貢献している

CATEGORY: 苔について

大気中の二酸化炭素などの温室効果ガスが
人間活動に伴って増加することで
大気が暖まる「地球温暖化」。

大気中のCO2は植物が光合成することで減少しますが
そのスピードより早く人間がCO2を大気に放出する結果
地球温暖化が進行していきます。

多くの人は森林がCO2を吸収していると思い浮かべるでしょう。
しかし、植物遺体の分解によって排出されるCO2量がそれを上回っており
CO2供給源になっているところもあるのです。

それに比べ、主にミズゴケなどで構成される湿原は
何千年というとても長い時間単位でCO2を吸収し貯めこんでいます。

ミズゴケが多い高層湿原はユーラシア大陸や北米大陸北部に広く分布し
陸地面積の約3%にもなります。

日本では中部地方の萍郷1200メートル以上の地域や
東北地方、北海道でみられます。

北方域の湿原地帯には泥炭とよばれる植物遺体の堆積物があり
そこには熱帯雨林の2~3倍にあたる約6000ギガトンもの
炭素を貯蔵しているといわれており、大気中に存在するCO2の炭素量と同じになります。

これらの泥炭地のほとんどでミズゴケの仲間が生息しており
炭素固定において重要な植物とされています。

北方の湿地帯に広がる泥炭のほとんどは
苔からできたもので、多くのCO2が固定されています。


 
 
 
なぜミズゴケ湿地では分解が遅いか

ミズゴケ湿地で分解が遅い理由の一つに酸素条件が挙げられます。

ミズゴケの細胞壁に水中のアルカリ性を示す陽イオンが吸収され
代わりに水素イオンが水中に放出されることが要因とされています。

ミズゴケは周辺の水を酸性化しそれが分解速度を遅くするのです。

ミズゴケ湿地の分解速度を遅くするその他の要因としては
窒素に対する炭素の割合が高く微生物の活性化が妨げられていること
ミズゴケの細胞壁の科学組成が分解を妨げ、嫌気的条件や冷涼な気候条件が
広域な地域の泥炭蓄積を可能にしています。
 
 
 
苔で断熱

地表面を覆う苔は太陽光線の反射量を増大させ効果があります。
苔が覆っている場所では土壌が露出しているところと比べ
太陽光線がより反射し大気中への熱エネルギー幅射量が少なくなり
特にスギゴケやミズゴケの仲間にみられます。

厚みのある苔マット内には適度な水分と適度な空隙があるため
外気温を近に伝えにくくする「断熱効果」があります。

苔の表面温度が22℃の場合でも苔の群生内部では
4.5℃しかなく土壌3cm下には永久凍土が残っている場合もあります。

断熱効果が高ければ高いほど永久凍土がそのままの状態で維持され
そこにある膨大な量の温室効果ガスの排出が抑えられ
太陽光線反射の効果を持つ苔は温暖化抑制に貢献しているのです。

苔マットを活用した屋上緑化では、苔の太陽光線反射効果を利用し
また、苔表面と設置面との間に空隙を設けることで断熱効果を発揮し
建物に直接降り注ぐ太陽熱を遮断することで、空調コストを下げる省エネ効果があります。


 
 
 
地球温暖化の影響

ミズゴケ湿原が広く分布する北極圏や周辺地域は
最も温暖化しやすいと言われており、今後の温暖化の影響で
ミズゴケ湿原が急速に減少する可能性が指摘されています。

ツンドラ地帯などの厚い苔のコートは
何千年も前から私達の住む地球を守ってくれてきましたが
苔のコートが破れて保護効果が薄れてしまうと取り返しの付かないことになります。

地球上の生物は自然とともに生きています。
生物の中で地球規模の自然の調和に影響することができる人類。
自分達のことだけを考えるのではなく地球や自然との調和を意識しなければならないですね。
 
 
 
まとめ

・苔はCO2を吸収し千年単位で固定してくれる
・北方域の湿原地帯には大気中のCO2の炭素と同じ量が埋蔵されている
・ミズゴケ湿地では分解が遅い
・苔は太陽光線の反射することで断熱効果がある
・苔は地球温暖化に影響している

乾燥地の環境に適応する苔

CATEGORY: 苔について

苔は最も乾燥地に適応した植物群の一つです。
乾燥地の植物といえば、みなさんはサボテンを想像されることでしょう。

サボテンは植物体の表面を硬いロウ物質で覆い葉をトゲ状にすることで
体内の水分をできるだけ外に逃がさないようにしています。

サボテンはわずかでも雨が降ると
横に広くひろげた根で水を少しでも多く吸収し太い茎に蓄え
乾燥が続く間、茎の中に蓄えた水で生き抜こうとします。

このサボテンと比較すると、根を持たず茎も太くない苔は
どうやって乾燥地に適応しているのでしょうか。

苔の植物体の表面は厚いロウ物質で覆われていないので
雨が降り体内に水を吸収しても天気が良くなればすぐに乾いてしまい
晴れた日が続くと苔は乾燥してカラカラの状態になってしまいます。

しかし、苔は植物体がカラカラの状態になると
休眠状態に入り生理的な活生がいっさいなくなります。
この状態で再び水が得られるのを待つのです。

カラカラの状態の植物体に再び水が供給されると
苔は急速に生理的な活性を取り戻します。

苔は体内の水分の消失を防ぐことができない代わりに
カラカラに乾燥しても大丈夫な能力を身につけているのです。

少ない水分で乾燥地に適応

その他、乾燥地の適応方法としては
体内に蓄える水分量を観察することで解ります。

乾燥地に生えている苔と湿地に生えている苔の体内に蓄えることができる水分量を比較すると
乾燥地の苔は湿地の苔と比べ体内に蓄えることができる水分量が「少ない」のです。

一般的な植物の生理的な活性は、細胞が十分に水で満たされ
パンパンに膨らんでいる状態のとき最も高くなり
水が失われて細胞が縮み始めると生理的な活性が低下するため
植物は常に細胞を水で満たし、しっかり膨らんだ状態に維持したいはずですが
苔の場合は矛盾してしているような気がします。

水を貯めないほうが得

多くの維管束植物は、根から水をどんどん吸収し
体内に多くの水を貯めて、細胞が膨らんだ状態を長く維持しようとしますが
苔はどれだけ頑張っても乾燥してしまうので、乾ききった細胞が再び水を吸収して膨らむとき
いかに少ない水で十分に膨らませることができるかが重要になってきます。

乾燥地に生えている苔の細胞は相対的に細胞壁が厚くなっており
細胞全体の容積に比べ水を貯める細胞中身の容積が小さく
細胞を少ない水で満たすことができます。

この厚い細胞壁をもつ細胞を膨らませるためには
強力な圧力が必要になりますが、細胞内を満たす溶液の濃度を
内部の浸透圧を上げることで膨らませる圧力を得ています。

乾燥地に生えている苔は湿地のものに比べ細胞内を満たす溶液濃度が高く浸透圧が高い傾向にあり
少しの水で厚い細胞壁を広げる強力な圧力を得ることができるのです。

苔は植物体に水を貯めないほうが乾燥地に適応することができるのですね。

まとめ

・苔は乾燥しても大丈夫な能力が身についている
・湿地の苔と比較し乾燥地の苔は少ない水で満たすため細胞壁が厚く細胞内容積が小さい
・厚い細胞壁を膨らませるための力を、細胞溶液の濃度を濃くし高い浸透圧で得ている

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