地球上の様々な場所に分布するコケ植物

2015-08-25

植物は時間をかけてゆっくりと生息する範囲を広げ
その結果としてある程度地理的にまとまった分布領域を持つようになります。

着実に時間をかけ範囲を広げるため、分布はその種の歴史を表します。
 
 
二つの分布長距離分布・依存的隔離分布
 
 
基本的には上記のような分布が通常ですが
中には地理的にとても離れた場所に点々と分布していて
その中間地域にまったく生息が確認されない場合もあります。

このような分布のことを「隔離分布」といい
隔離分布には「長距離分布」「依存的隔離分布」の大きく二つがあります。
 
 
長距離分布は、長い距離を種子や胞子が飛び、遠く離れた場所が新しい生育地となる場合で
依存的隔離分布は、本来広範囲に分布していたものが何百年・何千年の周期で繰り返される
寒冷化や温暖化などが原因で分布領域が分散され各地に点々としてしまった場合です。
 
苔類イイシバヤバネゴケはアジアと中米から見つかっており
蘚類シワナシチビイタチゴケ属は東アジア・南米・アフリカ東部、
蘚類エビゴケ属も東アジア、北米、メキシコ、大西洋のマデイラ島、
インド洋のモーリシャス島とわけのわからない分布をしています。

これらは一例ですが、コケ植物は隔離分布や広域分布する種や属が多く見られます。
 
 

 
 
コケ植物の分布要因
 
 
この分布には主に二つの原因が考えられます。

一つ目の原因は、コケ植物が他の植物くらべ
体が小さくて見つけにくく、見落としがある可能性が高いことです。

このため、ある地域に分布していないのではなく
そこで生息しているが見つかっていないだけというのです。

キサゴゴケ属ちう木の幹に生息するとても微小なコケがあり
これまで日本で一種、北米から一種の計二種だけが知られていましたが
2002年貼るに東京大学を中心に実施されたミャンマー北部
ビクトリア山周辺の植物調査にて新しく新種が発見されました。

植物体がとても小さいことで発見が遅れたケースで
今後調査が進めば他の場所でも発見される可能性が高いです。
 
 
二つ目の要因は、コケ植物は胞子で繁殖するため風に乗って
遠方へ飛ばされやすく、地理的に遠く離れた場所に届く
「長距離散布」が簡単に起こりやすいのです。

通常の風ではそれほど胞子が高く舞うことはありませんが
台風などの強い風で上昇気流に乗ってかなり遠くまで飛ぶこともあります。

また、鳥の水かきの泥に無性芽や植物の一部の断片が付着し
遠くまで飛ばされることも考えられ、
コケ植物が長距離散布する可能性がいくつもあります。
 
 

  
空気中に漂う胞子を調べた研究では、1000キロメートル以上
離れた場所にしか見つかっていない種の胞子が発見された報告もあります。

長距離を飛散するために成層圏に達したコケ胞子が
その環境でどのぐらい生きることができるか
実際に低温低圧条件でさらした実験では
調べた多くの胞子がこの環境で生き残った報告があります。
 
 
まとめ

・苔の分布には「長距離分布」「依存的隔離分布」がある
・分布の原因は「見つけれていない」と「風でとばされる」がある
・苔の胞子は低温低圧な成層圏でも生き残ることができる

苔の分枝で年齢を判断する

2015-08-21

ウマスギゴケやオオスギゴケは苔庭によく使用される蘚類で
ふんわりとした群生をつくります。

一本を抜いて見ると、先端から数センチは緑色の部分で
その下に長い茶色の茎が隠れていることがわかります。

この茎を観察してみると、ついている葉の密度と大きさが
場所により異なっていることがわかります。

小さい葉が詰まっている短い部分と
大きな葉が少し離れてついている長い部分が
交互に生えています。

これは季節によって成長度合いが異なるためで
春から夏にかけての成長に適した時期は活発に茎が成長するが
冬季は成長が鈍るからです。

木の年輪のように、一本の地上茎の年齢をある程度把握することも可能です。
 
 

 
 
 
イワダレゴケは土や岩の上を這う大型の蘚類で
少し標高の高い針葉樹林の林床などで多く生息しています。

イワダレゴケは茎の途中から新たに次の茎が生じるが特徴です。
次の年の茎が前の年の茎の途中から出ることを仮軸分枝と呼びます。

1年に1回分枝が起こるので、分枝の数を数えることで
ウマスギゴケの場合よりも地上茎の年齢を把握することができます。

コウヤノマンネングサやフジノマンネングサなどの大型で
地上茎が立ち上がる蘚類では新しい茎が地面下の根本部分から出て
地面下を長く伸び地下茎状になり、春に先端が地上に立ち上がって
新しい地上茎となります。
 
 

 
 
イワダレゴケやコウヤノマンネングサは
地上茎が約三年ほど緑色で光合成を行い

それ以上経つと茶色に変色して終わりをむかえます。

土を掘り見てみると、6~7年分の地上茎が繋がっていることがわかります。
 
 
まとめ

・茎を観察することである程度苔の年齢がわかる
・スギゴケは季節の成長度合いの差で年齢が把握できる
・年に1回、仮軸分枝が起こるので年齢が把握しやすい

環境に適応するための苔の戦略

2015-08-19

植物の生体を説明するうえで、「戦略」という言葉で表現されることがあります。
この場合の戦略とは、それぞれの種が特定の環境下で最大限効率的に生活し
繁殖するということになります。
 
 
コケ植物も含め植物は他の種がやって来る前に
できるだけ素早くその場所を占領し居座り続けること
そして自分の子孫でいっぱいにすることが大切になってきます。

苔は生きる環境に適応するため、環境ごとに様々な戦略がみられます。
 
 
一年生の苔は不安定
 
 
一般的に苔は一年中緑と思われていますが
冬枯する「一年生」の種が存在します。

一年生の苔は珍しいものではなく
日本に生息しているだけでもかなりの種類があります。

西日本の田んぼに生えている葉状体性の苔類ウキゴケ属の一種で
カンハタケゴケは晩夏頃に胞子が発芽して翌年の春先に一生を終える
数ヶ月間しか生きることのない短命の種類もあります。

外国の種類でリクシア・ニグロスクアマータという種は
胞子の発芽から二~三週間で最初の生殖器官をつくり
六~八週間で成熟した胞子をつくって枯れる短命のものがあります。
 
 

 
 
一年生のコケ植物は成長の時間が限られるため
そのほとんどは小型の種類に限られます。

そのため、あちらこちらで生息しているのですが
簡単にに見過ごしてしまい、なかなか私達の目にふれることはありません。

彼らを見つけるためには、刈り入れの終わった田んぼや
水を落とした溜池、干上がった地面やひび割れた土の隙間
などが絶好の観察場所です。

これらの場所は、光をめぐって競争する相手が少ないため
背の低い苔でも十分に光合成を行うことができるからです。
 
 
一年生のコケ植物は、短い一生のあいだに一回だけ
一生の最後の段階になって胞子嚢をつくり
胞子を飛ばした後は枯れてしまいます。

休眠によって成長に不適切な時期をやり過ごすことができるため
胞子は一般の植物体に比べ乾燥などの厳しい条件に長く耐えることができます。

これらにより、一年生のコケ植物は生存に不適な状況が
定期的に訪れる不安定な環境に生えるのに都合がよいことになります。
 
 
多年生の苔は安定的
 
 
一方、森林の林床など安定した環境には何年も生き続け
毎年のように胞子嚢をつくる種類が多く見られます。

蘚類のイワダレゴケは同じ個体が80年以上生き続け
なかには石灰岩性の蘚類オウムゴケが2800年
という年齢が推定された報告があります。


 
 
いずれにせよ、「一年生」でも「多年生」でも植物にとって大切なことは
他の種がやって来る前にできるだけ素早くその場所を占領し
居座り続けること、そして自分の子孫でいっぱいにすることです。

生きる環境が「不安定」なのか「ずっと安定」に対する適応の違いが
命の長さの差ということがわかります。
 
 
このように、コケ植物の生活様式の工夫つまり戦略は
どうすれば最も効率的に光合成し栄養分を蓄積できるか
どのタイミングで生殖器官をつければ最も確実に受精ができるか
効率的に胞子を飛ばすためにはいつ胞子嚢をつくればよいか
など様々な戦略があります。

 
 
まとめ

・苔は生きる環境に適応するため、環境ごとに様々な戦略がある
・苔は一年生と多年生がある
・環境が不安定か安定なのかによって命の長さが異なる

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