苔は大気汚染を把握することができる

2015-10-10

苔はじめじめした土の上に生えている、という印象があると思いますが
実際苔はありとあらゆる様々な場所に生息し、力強く生きています。

土の上はもちろん、他の植物の上、石の上、人がつくったブロック塀や
コンクリートの壁など様々ですが、ひとつの種類があらゆるところに
生育しているわけてはなく、それぞれが住みやすい環境があります。

木の幹は中でも最も住みやすい環境のひとつで
樹幹に着生するタイプの苔は乾燥に高い耐性を持ているものが多いですが
光合成をするには「水」は必要になり、木の幹は一見乾燥しているよに見えますが
雨が降ると十分に湿り、石やコンクリートより乾燥するのに時間がかかります。

木の幹では、土の上のように他の植物と光を巡って競争する必要もなく
水が得られる間あは十分に光が使えて光合成を行うことができます。

このように木の幹に着生している苔を「樹幹着生蘚苔類」と呼びます。
樹幹着生する植物はコケ類の他に、ランの仲間やシダ類、地衣類にもみられ
降水量の置い地域や濃霧がよく発生する環境では木の幹がみえなくなほど豊富に着生します。

大気汚染物質に敏感な苔

この樹幹着生蘚苔類にとって大きな障害は大気汚染物質の存在です。
苔にとって大気や雨水が純粋な状態であれば、樹幹着生は非常に心地良い場所になります。

しかし、大気や雨水中に汚染物質が混ざりこみ
育成に欠かせない酸素や二酸化炭素が汚染されているとなると
枯れてしまう可能性が高まります。

大気が劣悪化した場合、樹幹着生植物が衰退していく様子が
初めて観察されたのは19世紀のことで、産業革命以降の石炭消費に伴う大気汚染が原因で
豊富にあった樹幹着生地衣類がいたるところで消失してしまいました。

同様に樹幹着生蘚苔類も大気汚染に影響を受けやすいことも観察されました。

日本では気候要因が湿潤なので樹幹着生蘚苔類が多く分布しますが
やはり大気汚染濃度に強く影響されていることが分かっています。

この事実が発見されてから20世紀半ばまで、大気汚染物質の主要成分は竜王酸化物で
水に溶け込むと非常に強い酸化力を持ちますが、石炭から石油や天然ガスへ
エネルギーが転換したため現在は減少しています。

そのかわり、自動車使用の増加に伴って窒素酸化物や、
それが光化学反応を起こすことで光化学オキシダントが生成され大気二次汚染物質が増加し、
これらは樹幹着生植物に強い毒性を示すといわれています。

大気汚染による具体的な苔への影響

コケ類が大気汚染物質に感受性が高い理由として、
コケ類のほとんどが光合成細胞が直接的かつ永続的に大気環境にさらされているため
細胞単位で大気の出し入れを行っていることが大気の変化に敏感ということです。

また、多くの種で葉の細胞層が一層で光合成細胞が汚染物質にさらされ続けることも要因です。

栄養が十分に得られない環境では、大気中から酸素や二酸化炭素だけでなく
栄養分まで求めることになり、これも要因のひとつになります。

さらに、蘚苔類は大気汚染物質の中でもとくに金属汚染物質を蓄積してしまう性質があり
細胞のミネラルバランスや代謝を乱す可能性があるといわれています。

乾燥など自然のストレスには強い蘚苔類も、
人間が創りだした大気汚染という毒には弱いということがわかります。

苔を調べることで大気汚染を測定する

この大気汚染に対する反応は種によって異なります。
大気汚染に対して弱いものもあれば、ある程度耐性を持つものもあり
大気汚染に弱い種類が衰え減少することで競争が低下し分布範囲を拡大する種類もあります。

なので、苔が樹冠を広く覆っていても種数が少ないと
大気汚染の影響があると判断することができます。

この性質を利用し苔の種類組成と生息量を測定することで
大気汚染濃度を指標する大気汚染清浄度指数が考案されました。

この指標は世界の様々な都市で適応され、
汚染物質の濃度と非常に高い相関があることが確認されています。

ある程度の苔の種類を選択し、その生育分布を観察することで
その地域の汚染度を理解することができます。

大気の汚染、つまり人間活動の活発化を指標してくれる
樹幹着生蘚苔類は人類が地球環境を変化させている愚かさを指標してくれているのではないでしょうか。

これからは、身近な森を増やし守り保全するとともに
これらの木々に着生する苔を増やすことも大切な視点となるでしょう。

苔は薬剤に強い

2015-10-06

みなさんは、人工的に設計された緑化エリアにある苔を
どう感じていらっしゃいますか?

苔を使って庭を緑化したいというニーズもあれば
芝生に生えた苔を取り除きたいという要望もあります。

特にゴルフ場のグリーンに苔が沢山生えたケースなどの場合は
ある種類の薬剤が大量に散布し苔を含めた雑草を除去しているそうです。

苔を雑草から守るには

苔を取り除きたいというケースとは別に
庭にある苔を雑草から守りたいというニーズもあります。

庭の雑草を除去する手段として除草剤を使用する場合がありますが
この除草剤は種類によっては苔にほどんど効かないのです。

除草剤パラコートの一種でグラモキソンというのが
スギゴケに対して薬害がほとんどないことで広く使用されおり
使用後に単子葉類・双子葉類は枯れてしまいますが
苔はまったくどうもなく逆に青々とするぐらいとのことです。

日本庭園

ただ、除草剤の中には苔まで枯らしてしまうものもあり
これらを苔庭の除草目的で使用することは避けたほうがよいですね。

同じように、庭木の消毒も苔に悪影響を与えることも報告されています。
この場合は、苔に薬剤がかからないようシートをひくことで防ぐことができます。

ところが、ハイゴケやイタチゴケやアオギヌゴケの仲間
つまり苔のなかでも雑草的正確の強い種類は消毒に強いようです。

ゼニゴケ対策

盆栽や苔庭で嫌われるゼニゴケ類は
除草剤ではなかなか枯れず問題となってしまいます。

ゼニゴケ

ゼニゴケ退治にコケレスという商品がありますが
有効成分は酢酸でできている対策アイテムです。

酢酸の主成分は料理に使用する酢ということで
ある本にはゼニゴケを退治するために筆で酢を塗る方法が書かれているそうです。

身近にある酢を活用してみてもいいかもしれませんね。

苔を研究し初めて見つかった物質は300種類

2015-10-03

人類は昔から、いろいろな植物などを薬として使い
病気の症状を抑え、治療するために活用してきました。

現在では、植物などから有効成分を取り出し
さまざまな化学反応を加えて優れた効果のある物質に変化したものや
天然の物質と同じ構造の物質を科学的に合成したものが薬として使用されています。

新薬の開発には、コンピューターによる分子設計の技術が使われていますが
まだまだ天然の物質である植物が生産する物質には未知の有効成分があると考えられています。

薬草園などで栽培されている植物は被子植物がほとんどで
苔を薬に使う伝統は日本にはないですが、中国やヨーロッパでは
20種類ほどの苔が鎮痛剤利尿剤などの薬用に使用されています。

以前、HappyMOSSブログでも紹介しました苔の薬に関する記事はこちら。
苔の成分にはがん細胞を抑制する効果がある!?

苔類の細胞の中には、油体とよばれる物質が存在し
文字どうり油のように水に溶けにくい物質が含まれており
この物質はテルペン類(天然ゴムもテルペン類)とされています。

苔の研究が進むにつれ、テルペン類以外にも複雑な物質が発見されており
苔類を研究することで初めて見つかった物質は約300種あるそうです。

しかし、苔は体が小さくなんとなく地味、名前を把握するのも困難なため
研究しようとする科学者が世界でも少なく、分析がされた苔類は全体の5%程度にすぎません。

このため、苔類にはまだまだ未発見の物質が多くあると考えられ
少数の科学者で人や動物の培養細胞、昆虫や他の植物、細菌、
エイズウィルスの酵素に与える影響も研究されており
毎年のように新しい性質をもった物質が発見されています。

コケ植物のオスとメス

2015-10-01

コケ植物にも私達と同じようにオスとメスの区別がある種類が存在します。
オスの苔を雄株、メスの苔を雌株といい、雄株と雌株では体の大きさに違いがあるのでしょうか。

私達の周りにあるゼニゴケとコスギゴケを見てみると、雄株と雌株の体の大きさに違いはありません。
このように、ほとんどの苔では雄株と雌株の体の大きさに違いはない場合が多いのです。

ところが、ある苔の種類は雄株の大きさが全長一ミリメートルにも満たず
雌株の茎、葉の基部、葉の上、仮根などに着いて生きているものもあります。

このように小さい雄株を「矮雄」と呼びます。

雌株に付着して生きているからといって雌株に寄生しているわけではなく
自分が生きていくのに必要な栄養は小さい葉で光合成を行いまかなっています。

矮雄の体のつくりは簡単にできていて、多くは短い茎の先にある二~三個の造精器が
数枚の小さな葉に包まれているだけのつくりで、小型で簡単なつくりをしていても
雄株としての役割はしっかり果たしており、精子をつくり子孫を残しています。

このような、矮雄のをつくる苔は少なくなく、日本では約60種あることが知らています。

胞子によって矮雄ができる仕組みは異なる

なぜこれらの苔では雄株がこんなに小さくなるのでしょうか。
その仕組は大きく二つあると考えられています。

一つ目は、異形胞子をもつ種類での矮雄です。
コケ植物での異形胞子とは、一つの蒴の中に大きさの異なる
大小の胞子がほぼ同数作られる場合を言い、小さい胞子からは必ず矮雄が誕生します。

二つ目は、一つの蒴の中にほとんど同じ大きさの胞子ができる同型胞子を持つ種類で
矮雄形成のしくみが異形胞子の場合と異なり、矮雄の他に雌株と同じ大きさをした
正常型の雄株が存在しています。

同形胞子では、蒴から散布した胞子が雌株の上で発芽したときのみ
矮雄となり、その他は雌株と同じ大きさになると考えられます。

生命はメスから始まった

生命体は初めメスが分裂しいわゆるクローンをつくることで種を残してきましたが
環境変化が起こると分裂により同じ性質をもつ生命が全滅してしまいます。

そのため生命体はオスを創り、異なる環境に対応し生きてきた
メスとオスを掛けあわせて、より地球上の環境変化に適応できる
子孫を残す仕組みを創り生き残ってきました。

つまり、最初はメスから始まったのです。

この矮雄の性質をみると雌株のために雄株が存在している気がしますね。

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