ブログ
苔について

苔は地球温暖化の抑制に貢献している

池田 将人
AUTHOR 池田 将人

大気中の二酸化炭素などの温室効果ガスが
人間活動に伴って増加することで
大気が暖まる「地球温暖化」。

大気中のCO2は植物が光合成することで減少しますが
そのスピードより早く人間がCO2を大気に放出する結果
地球温暖化が進行していきます。

多くの人は森林がCO2を吸収していると思い浮かべるでしょう。
しかし、植物遺体の分解によって排出されるCO2量がそれを上回っており
CO2供給源になっているところもあるのです。

それに比べ、主にミズゴケなどで構成される湿原は
何千年というとても長い時間単位でCO2を吸収し貯めこんでいます。

ミズゴケが多い高層湿原はユーラシア大陸や北米大陸北部に広く分布し
陸地面積の約3%にもなります。

日本では中部地方の萍郷1200メートル以上の地域や
東北地方、北海道でみられます。

北方域の湿原地帯には泥炭とよばれる植物遺体の堆積物があり
そこには熱帯雨林の2~3倍にあたる約6000ギガトンもの
炭素を貯蔵しているといわれており、大気中に存在するCO2の炭素量と同じになります。

これらの泥炭地のほとんどでミズゴケの仲間が生息しており
炭素固定において重要な植物とされています。

北方の湿地帯に広がる泥炭のほとんどは
苔からできたもので、多くのCO2が固定されています。


 
 
 
なぜミズゴケ湿地では分解が遅いか

ミズゴケ湿地で分解が遅い理由の一つに酸素条件が挙げられます。

ミズゴケの細胞壁に水中のアルカリ性を示す陽イオンが吸収され
代わりに水素イオンが水中に放出されることが要因とされています。

ミズゴケは周辺の水を酸性化しそれが分解速度を遅くするのです。

ミズゴケ湿地の分解速度を遅くするその他の要因としては
窒素に対する炭素の割合が高く微生物の活性化が妨げられていること
ミズゴケの細胞壁の科学組成が分解を妨げ、嫌気的条件や冷涼な気候条件が
広域な地域の泥炭蓄積を可能にしています。
 
 
 
苔で断熱

地表面を覆う苔は太陽光線の反射量を増大させ効果があります。
苔が覆っている場所では土壌が露出しているところと比べ
太陽光線がより反射し大気中への熱エネルギー幅射量が少なくなり
特にスギゴケやミズゴケの仲間にみられます。

厚みのある苔マット内には適度な水分と適度な空隙があるため
外気温を近に伝えにくくする「断熱効果」があります。

苔の表面温度が22℃の場合でも苔の群生内部では
4.5℃しかなく土壌3cm下には永久凍土が残っている場合もあります。

断熱効果が高ければ高いほど永久凍土がそのままの状態で維持され
そこにある膨大な量の温室効果ガスの排出が抑えられ
太陽光線反射の効果を持つ苔は温暖化抑制に貢献しているのです。

苔マットを活用した屋上緑化では、苔の太陽光線反射効果を利用し
また、苔表面と設置面との間に空隙を設けることで断熱効果を発揮し
建物に直接降り注ぐ太陽熱を遮断することで、空調コストを下げる省エネ効果があります。


 
 
 
地球温暖化の影響

ミズゴケ湿原が広く分布する北極圏や周辺地域は
最も温暖化しやすいと言われており、今後の温暖化の影響で
ミズゴケ湿原が急速に減少する可能性が指摘されています。

ツンドラ地帯などの厚い苔のコートは
何千年も前から私達の住む地球を守ってくれてきましたが
苔のコートが破れて保護効果が薄れてしまうと取り返しの付かないことになります。

地球上の生物は自然とともに生きています。
生物の中で地球規模の自然の調和に影響することができる人類。
自分達のことだけを考えるのではなく地球や自然との調和を意識しなければならないですね。
 
 
 
まとめ

・苔はCO2を吸収し千年単位で固定してくれる
・北方域の湿原地帯には大気中のCO2の炭素と同じ量が埋蔵されている
・ミズゴケ湿地では分解が遅い
・苔は太陽光線の反射することで断熱効果がある
・苔は地球温暖化に影響している