苔は大気汚染を把握することができる

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苔はじめじめした土の上に生えている、という印象があると思いますが
実際苔はありとあらゆる様々な場所に生息し、力強く生きています。

土の上はもちろん、他の植物の上、石の上、人がつくったブロック塀や
コンクリートの壁など様々ですが、ひとつの種類があらゆるところに
生育しているわけてはなく、それぞれが住みやすい環境があります。

木の幹は中でも最も住みやすい環境のひとつで
樹幹に着生するタイプの苔は乾燥に高い耐性を持ているものが多いですが
光合成をするには「水」は必要になり、木の幹は一見乾燥しているよに見えますが
雨が降ると十分に湿り、石やコンクリートより乾燥するのに時間がかかります。

木の幹では、土の上のように他の植物と光を巡って競争する必要もなく
水が得られる間あは十分に光が使えて光合成を行うことができます。

このように木の幹に着生している苔を「樹幹着生蘚苔類」と呼びます。
樹幹着生する植物はコケ類の他に、ランの仲間やシダ類、地衣類にもみられ
降水量の置い地域や濃霧がよく発生する環境では木の幹がみえなくなほど豊富に着生します。

大気汚染物質に敏感な苔

この樹幹着生蘚苔類にとって大きな障害は大気汚染物質の存在です。
苔にとって大気や雨水が純粋な状態であれば、樹幹着生は非常に心地良い場所になります。

しかし、大気や雨水中に汚染物質が混ざりこみ
育成に欠かせない酸素や二酸化炭素が汚染されているとなると
枯れてしまう可能性が高まります。

大気が劣悪化した場合、樹幹着生植物が衰退していく様子が
初めて観察されたのは19世紀のことで、産業革命以降の石炭消費に伴う大気汚染が原因で
豊富にあった樹幹着生地衣類がいたるところで消失してしまいました。

同様に樹幹着生蘚苔類も大気汚染に影響を受けやすいことも観察されました。

日本では気候要因が湿潤なので樹幹着生蘚苔類が多く分布しますが
やはり大気汚染濃度に強く影響されていることが分かっています。

この事実が発見されてから20世紀半ばまで、大気汚染物質の主要成分は竜王酸化物で
水に溶け込むと非常に強い酸化力を持ちますが、石炭から石油や天然ガスへ
エネルギーが転換したため現在は減少しています。

そのかわり、自動車使用の増加に伴って窒素酸化物や、
それが光化学反応を起こすことで光化学オキシダントが生成され大気二次汚染物質が増加し、
これらは樹幹着生植物に強い毒性を示すといわれています。

大気汚染による具体的な苔への影響

コケ類が大気汚染物質に感受性が高い理由として、
コケ類のほとんどが光合成細胞が直接的かつ永続的に大気環境にさらされているため
細胞単位で大気の出し入れを行っていることが大気の変化に敏感ということです。

また、多くの種で葉の細胞層が一層で光合成細胞が汚染物質にさらされ続けることも要因です。

栄養が十分に得られない環境では、大気中から酸素や二酸化炭素だけでなく
栄養分まで求めることになり、これも要因のひとつになります。

さらに、蘚苔類は大気汚染物質の中でもとくに金属汚染物質を蓄積してしまう性質があり
細胞のミネラルバランスや代謝を乱す可能性があるといわれています。

乾燥など自然のストレスには強い蘚苔類も、
人間が創りだした大気汚染という毒には弱いということがわかります。

苔を調べることで大気汚染を測定する

この大気汚染に対する反応は種によって異なります。
大気汚染に対して弱いものもあれば、ある程度耐性を持つものもあり
大気汚染に弱い種類が衰え減少することで競争が低下し分布範囲を拡大する種類もあります。

なので、苔が樹冠を広く覆っていても種数が少ないと
大気汚染の影響があると判断することができます。

この性質を利用し苔の種類組成と生息量を測定することで
大気汚染濃度を指標する大気汚染清浄度指数が考案されました。

この指標は世界の様々な都市で適応され、
汚染物質の濃度と非常に高い相関があることが確認されています。

ある程度の苔の種類を選択し、その生育分布を観察することで
その地域の汚染度を理解することができます。

大気の汚染、つまり人間活動の活発化を指標してくれる
樹幹着生蘚苔類は人類が地球環境を変化させている愚かさを指標してくれているのではないでしょうか。

これからは、身近な森を増やし守り保全するとともに
これらの木々に着生する苔を増やすことも大切な視点となるでしょう。

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