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苔について

乾燥地の環境に適応する苔

池田 将人
AUTHOR 池田 将人

苔は最も乾燥地に適応した植物群の一つです。
乾燥地の植物といえば、みなさんはサボテンを想像されることでしょう。

サボテンは植物体の表面を硬いロウ物質で覆い葉をトゲ状にすることで
体内の水分をできるだけ外に逃がさないようにしています。

サボテンはわずかでも雨が降ると
横に広くひろげた根で水を少しでも多く吸収し太い茎に蓄え
乾燥が続く間、茎の中に蓄えた水で生き抜こうとします。

このサボテンと比較すると、根を持たず茎も太くない苔は
どうやって乾燥地に適応しているのでしょうか。

苔の植物体の表面は厚いロウ物質で覆われていないので
雨が降り体内に水を吸収しても天気が良くなればすぐに乾いてしまい
晴れた日が続くと苔は乾燥してカラカラの状態になってしまいます。

しかし、苔は植物体がカラカラの状態になると
休眠状態に入り生理的な活生がいっさいなくなります。
この状態で再び水が得られるのを待つのです。

カラカラの状態の植物体に再び水が供給されると
苔は急速に生理的な活性を取り戻します。

苔は体内の水分の消失を防ぐことができない代わりに
カラカラに乾燥しても大丈夫な能力を身につけているのです。

少ない水分で乾燥地に適応

その他、乾燥地の適応方法としては
体内に蓄える水分量を観察することで解ります。

乾燥地に生えている苔と湿地に生えている苔の体内に蓄えることができる水分量を比較すると
乾燥地の苔は湿地の苔と比べ体内に蓄えることができる水分量が「少ない」のです。

一般的な植物の生理的な活性は、細胞が十分に水で満たされ
パンパンに膨らんでいる状態のとき最も高くなり
水が失われて細胞が縮み始めると生理的な活性が低下するため
植物は常に細胞を水で満たし、しっかり膨らんだ状態に維持したいはずですが
苔の場合は矛盾してしているような気がします。

水を貯めないほうが得

多くの維管束植物は、根から水をどんどん吸収し
体内に多くの水を貯めて、細胞が膨らんだ状態を長く維持しようとしますが
苔はどれだけ頑張っても乾燥してしまうので、乾ききった細胞が再び水を吸収して膨らむとき
いかに少ない水で十分に膨らませることができるかが重要になってきます。

乾燥地に生えている苔の細胞は相対的に細胞壁が厚くなっており
細胞全体の容積に比べ水を貯める細胞中身の容積が小さく
細胞を少ない水で満たすことができます。

この厚い細胞壁をもつ細胞を膨らませるためには
強力な圧力が必要になりますが、細胞内を満たす溶液の濃度を
内部の浸透圧を上げることで膨らませる圧力を得ています。

乾燥地に生えている苔は湿地のものに比べ細胞内を満たす溶液濃度が高く浸透圧が高い傾向にあり
少しの水で厚い細胞壁を広げる強力な圧力を得ることができるのです。

苔は植物体に水を貯めないほうが乾燥地に適応することができるのですね。

まとめ

・苔は乾燥しても大丈夫な能力が身についている
・湿地の苔と比較し乾燥地の苔は少ない水で満たすため細胞壁が厚く細胞内容積が小さい
・厚い細胞壁を膨らませるための力を、細胞溶液の濃度を濃くし高い浸透圧で得ている